脱出のトライアングル -シーズン1「発症から苦しみの道程」ー③「僕の体、いったいどうしたんだ」
パニック発作から3か月間の自分は、妙にハイテンションであり、
常に【のぼせ】ている状態であった。
熱があるわけではないし、お風呂に入ったわけでもない、
だけど、体が熱いという感覚がいつまでも続き、
寒い冬なのに、コートやジャンパーを着なくても平気だった。
自分で自分の【身体の異常】に気づきながらも、仕事は待ってくれないし、
「そのうち治まるでしょう。」と安易考えていた。
それ以外にも、更年期障害に似た症状がたくさんあった。
肩こり、頭痛、頭重感、腰痛など、体のあちこちに様々な症状がたくさんでてきた。
腰痛には、コルセットを巻いたり、痛み止めを飲んだり、、、対処療法的に改善を試みたが一向に良くはならなかった。
うつ病の症状には、更年期障害に似た症状が現れることがあるらしい。例えば、上記の私の症状である、のぼせやほてり感、肩こり、頭痛、腰痛、胃痛、便通異常などなど。これらの症状があると、うつ病からの症状である可能性もあるらしい。
僕は、様々な症状を自覚しているのに、
「俺、大丈夫かな、、、でも、仕事が忙しいしからしょうがない。」と、
不安がある中でも、自分の症状を直視するなく、時が流れていった。
医療従事者でそれなりに知識はある。
様々な医療機関で勤務し、多くの患者さんと関わってきた経験もある。
しかしながら、自分の症状となると、
自分の症状が怖くなり、不安になり、受け入れられなくなる。
知識がある故に、
「もし、あの病気だったどうしよう。この病気だったら終わりだ。」
と、決め込んでいて受け入れらなかった。
なによりも、精神的な症状は多種多様であり、うつ病がこのような身体的症状が伴うことなどの知識がなかった。
うつ病に関する本は、今まで数多く読んできた。
専門書や新書、体験記などの多種にわたって目にしてきたのに、、、。
それだけ、精神的な症状は理解が難しく、複雑なメカニズムなどだろう。
だから、うつ病をはじめ、精神的な疾患の社会的認知はまだまだ遅れており、会社や学校でも理解されるのが難しいのもあるかもしれない。
うつ病は孤独な病気、、、色々なうつ病の体験記やツイッターを見ていると、他社に理解されるのが難しく、うつ病と付き合うのも大変なのに、孤独とも戦っているという記事を良く目にする。
うつ病と孤独、、、これはいつになったら解消されるだろうか。と考えてしまう。
うつ病の孤独感にはいくつか種類があると思う。
・身体的な孤独感ー人の関わりや触れ合い
・精神的な孤独感ー生きがいとのつながり、感情の相互作用
・社会的な孤独感ー会社や学校などの組織との関わり
うつ病は上記の3つすべてが、孤独になる病気なのではないか。
病気との付き合いに加えて、孤独とも付き合っていかなくてならないうつ病。
もちろん、「家族の理解がある」、「恋人の理解がある」、「友人の理解」がある人もいる。
きっと、この方たちは、病気が改善するスピードが早いのではないと思う。
この理解者がいる、いないの差でうつ病からの回復力が異なってくると思う。
いずれにしても、うつ病がもっと社会的に認知され、社会的に受け入れてもらいえるような世の中になって欲しい。
病気のメカニズムの解明や治療薬の進展も願うばかりだ。
・・・そんな、うつ病の症状とは知らず、身体的な症状と戦っている時の仕事内容は、プロジェクトを組んで組織自体を立て直していくという、大きな仕事の最中であり、
「僕もこの仕事に関われて光栄だ!」
と、病気を受け入れる時間がなかった時期でもあった。
このような状況などが重なり自分の症状を無視していった。
この【症状の無視】によって、身体的にも精神的にも病魔にどんどん蝕まれていってことなど、その時は知る由もなかった。
あの急激な状態変化まで、刻一刻と迫っていた。
仕事の面でも、パソコンの画面が追えなくなり、メールの文字が頭に入ってこなくなった。
以前なら、メールを読むことなど瞬時に把握し理解できていた僕が、メールが読むにしても、2、3回同じ文章を読まないと理解できなくなってきた。
テレビにおいても、番組表をチェックしようとするが、全然頭に入ってこない。
無理に文字を追っていくと吐き気がでてきたり、めまいが出現してきた。
この時は既に、脳の機能低下および自律神経系が大きく乱れたのだろう。
思考に関わる前頭葉の機能が落ちてきたのだと思う。
そして、イライラや易怒性も頻繁になってきて、いつも目がギラギラしている状態でああった。
交感神経が優位になりすぎていたのだろう。
うつ病は、脳の病気あるということが良くわかる。
イライラしすぎて、人間関係がこじれる可能性もあるうつ病、、、周りの人が妙にイライラしていたり、ギラギラしている時は要注意である。
その人が、仕事人間やストレスを抱えているようであれば、さらに注意が必要である。
とにかく休ませる。仕事から遠ざける。適切な医療機関やカウンセラーに相談するなどの対処が必要だと思う。
イライラやギラギラは、かなり大きなサインである考えている。
脳の機能低下の症状がさらに続き、出張先でも、問題が起きた地図が読めなくなって道に迷うことが多くなり、打ち合わせ先の方に迎えにきてもらう事もあった。
体力に自信のあった僕が、疲れやすくなった。
もともと、お腹は弱い方だが、下痢が頻繁になり、打ち合わせ中でもトイレに行くことが度々あった。
「なんか調子が悪いな、でも、ただの疲れだよな、、、」
頭が回らない自分に、不安をおぼえながらも、少し休めば良くなだろうと思っていた。
睡眠も休みの日なら、昼頃まで眠っていたが、早朝覚醒が頻繁になり、ゆっくり眠ることができなくなった。
「もっと寝たいのに、眠れない、、、。」
歩いてときも、発熱しているような浮遊感があり、フワフワ浮いている感覚であった。
出張先でも、すぐに疲れてしまい、息切れするようになってきた。
打ち合わせも上の空で全く頭に入ってこない。
下痢も続いていた。
飛行機で出張から戻り、空港から自宅までの車なかでは、寒くもないのに異常な手の震えや体の震え、焦燥感、胸がゾワゾワする感覚があり、何度も何度も深呼吸をしたが、一向に落ち着かなかった。
とにかく頭が回らない、思考力の低下が顕著だった。
次の日、仕事を何とか終わらせたが、胸のゾワゾワ感、焦燥感が治まらなく、疲労感もすごかったために、
「明日休まさせて下さい。」
久しぶりの休むを申し出た。
この時は、
「少し休んだら良くなるだろう。」
と考えていた。
その時は夜は何とか眠れたが、早朝覚醒は相変わらずであった。
あんなに好きだった昼寝もできなくなった。
休みだから、気分転換に散歩でもしようと思って行ってみるが、
気分的にも良くならず、焦燥感やゾワゾワ感は継続しており、
さらには、漠然な不安感が頭を支配していった。
何に対する不安かもわからない、漠然たる不安感、、、
不安で不安でどうしようもなかった。
その時は、何も不安になることなど持ち合わせていなかった。
うつ病と不安感は表裏一体、、、脳の扁桃体といわれる部分は、不安や恐怖といった感情に関わっており、うつ病や不安障害を抱えている方はこの扁桃体の機能異常がある可能性があるらしい。
これも見ても、うつ病は脳の病気なのだと思う。
次に日には、脚のふくらはぎの部分が鉛の様に重くなった。
鉛様麻痺・・・手足が鉛のように重くなってしまううつ症状の一つらしい。
また、脱力感が半端なく
「足が重いし、元気がでない、、、やばいなこれ、、、」
昼寝しようにもできない、休みたいけど不安感があり、ゆっくりできない休めない。
「僕の体いったいどうしたんだ。」
不安感が頭を占めるようになり、外に出るだけでも不安があり、車に乗ることや買い物に行くことなど1人では不安でできなくなっていた。
同僚に相談すると、何も悲しいことがあるわけではないのに、涙が溢れてきて、訳もなく号泣していた。
「何も悲しいことがないのにどうしたんだろう?」
自分で自分の状態わからなくなった。
その時にも相談したが、
「はぁ? おかしくなったの?」
と一蹴され、僕の状況を見てイライラしていた。
近くの薬局で、不安感などに効果のある漢方薬や神経薬を買って飲んだが全く効かなく、ますます症状が悪化するばかりであった。
食欲も極端に低下した。
全く食べられない。
おにぎり一個がギリギリであった。
下痢も継続していた。
脱力感、気力の低下、、、
「これは、心療内科か精神科に受診するしかないか、、、。」
「うつ病かもしれない、いや大丈夫だ。」
と、同じ問答を繰り返しがら、ネットで調べて近くの心療内科に電話した。
10日後に受診予約ができた。
ただ、この10日間が異様に長く、症状の悪化を招いたと思う。
仕事に行きながらも、不安感、焦燥感、胸のゾワゾワ感、脱力感、気力の低下があり、何もできなくなっていった。
職場の人からも、心配された。
自分でも自分のことがわからないため、どのように説明していいかわからなかった。
そして、受診の日がやってきた。