脱出のトライアングル -シーズン1「発症から苦しみの道程」ー⑧消えない不安感
2017年6月、精神科での初めての入院。
うつ病での初めての入院。
入院して食事は何とか食べれたものの、夜は相変わらず眠れなく、不安感や焦燥感、恐怖感、胸のザワツキが消えることはなかった。
この消えない不安感はいったい何なんだ。
どこからともなくやってきて、消えることのない不安感、、、。
何かに憑りつかれたような強烈な不安感。
看護師さんと話をしても、誰と話をしても消えない不安感や恐怖感がいつも僕を苦しめていた。
夜眠れないときは特に強烈で、不安が不安を呼び、さらに不安を呼ぶことで、何でもないようことも怖くなり、ネガティブ思考になる。
2017年5月に発症以来、この不安感や恐怖感は消えることがなく、いつも怯えていた。
「気持ちの持ちようだよ。」
「気晴らしでもすれば大丈夫だよ。」
周りの人たちは、このように言ってくるが、【自分ではコントロールできない】、勝手に襲ってくる症状なのである。
うつ病は大脳辺縁系が過度に反応している病気であるらしいので、その一部である不安や恐怖に関係する扁桃体が暴走しているため、何もしていない状況でも、このように不安感や恐怖感を自覚してくるらしい。
うつ病は常に扁桃体が反応している状態であるので、少しの刺激やストレスで扁桃体はさらに暴走してしまい、強烈な不安感や恐怖感が襲う事になると思う。
このように、脳の指令による過剰な不安感や恐怖観であるために、自分ではコントロールできないのは当然であり、どうしていいいかわからないのも当然である。
しかし、
「気のせい。」
「考えすぎ。」
「笑って笑って。」
と、周りの人には理解できないのが、うつ病の特徴であると思う。
気の持ちようで取り除くことができるのであれば、それは病気でないような気がする。
最悪の場合は、この不安感や恐怖感は「死」をイメージすることにつながると思う。
この不安感や恐怖感から逃れたい、楽になりたい、、、。
この強烈な不安感や恐怖感で未来への兆しが見えない、、、。
脳が勝手に「死」をイメージさせ行動を結びつけてしまう、、、。
というように、うつ病は不安感と恐怖感ともに、「死」との歯車を勝手に結びつけてしまう病気である。
私の場合も、不安感と恐怖感で「死」をイメージすることが度々あり、脳が勝手に「死」との歯車を結びつけそうになったいた。
うつ病では、この不安感や恐怖感が消えない限り、いつも脳は勝手に「死」との歯車を結びつけさせようとしていると思う。
うつ病と不安感・恐怖感は表裏一体であり、常に苦しむことになる。
特にうつ病は眠れない病気であるので、眠れないときには、より一層その不安感や恐怖感が強くなるので、孤独で辛い時間を過ごすことになる。
そう、
うつ病は眠れない病気、、、
うつ病は脳の反応によって不安や恐怖感が襲ってくる病気、、、
この2つが加われば、死の恐怖とも戦うことになる病気である。
それだけ、この不安感や恐怖感は辛く苦しいうつ症状の一つである。
入院して一日目、夜はほとんど一睡もでできない状況であり、不安感と恐怖感を抱きながら長い長い夜を過ごしていった。
「どうして眠れないんだ。」
「このままダメになってしまうのか。」
眠れないことで、どんどん不安感が増していき悪循環になっていた。
これが毎晩続くのである。
これがうつ病。
心の持ちようで解決できないのがうつ病である。
私は過去に医療の現場で、うつ病の方のことを本当の意味で理解できていなかったことを恥じる。そうして申し訳ない気持ちで一杯である。
「不安で眠れないんです。」
そう訴えてきても、少しお話を聞き、追加の眠剤を渡すだけしかできなかった自分を恥じる。
眠れないに加えて、不安で不安でどうしようもないんだ。自分ではコントロールできないんだ。
そのことをわかっていれば、もう少し患者さんの気持ちに寄り添ってケアできたかもしれないと思う。
この絶え間ない不安感と恐怖感、死への恐怖とも戦い、涙を流しながら必死に耐えて、ようやく入院2日目の朝を迎えた。
食欲はまったくないが、無理くり朝食を食べた。
夜は眠れない、昼寝もできない。
昼間ベッドに横になっているが、寝ようとすると胸のザワツキが強くなり、ネガティブなことを考え胸や色々なところが苦しくなり、
「うぁー!」
と飛び上がるような感覚で目を開けてしまう。
寝るという行為ができない状態になってしまう。
寝るとか、リラックスするということができない。
いつも緊張状態であり、不安感が付きまとう。
脳の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)に乱れがあり、リラックスすることができない状態を作ってしまっていると思う。
「あれだけ好きだった昼寝ができない。」
「昼寝したい。とくかく寝たい。」
「休みたい。」
この思いも虚しく、症状と時間だけが過ぎていく。
連日の不眠で疲労困憊であることに加えて、絶え間ない不安感と恐怖感に歩くことがやっとな僕は、もうどうしていいかわからなくなり看護師さんに相談した。
ただただ、この状況から抜け出したく、藁にもすがる思いで相談した。
医療従事者であるプライドなんてどうでも良い。
僕は泣きながら、自分が苦しいことを訴えた。
「今はまだ不安感が消えないと思います。そして、なかなか眠れないと思います。うつ病が不安感を呼び、寝かせてくれないと思います。薬の調整がうまくいき、少しリラックスすることができれば不安感も軽くなりますし、必ず眠れますので安心して下さい。」
「今、抑うつ状態の真っただ中にあります。必ず脱出できます。」
看護師さんは、笑顔で優しく僕に返答してくれた。
「僕は今抑うつ状態、、、すべての症状はうつ病がそうさせている。不安感が軽くなる。眠れるようになる。」
僕は看護師さんが話してくれたことを、何度も何度も復唱していた。
まだ、薬の調整をしていない段階であり、この病院では、まずはストレスフリーにして、休息をしてもらうが一般的なようであるが、僕は募る不安感や恐怖感でいてもたってもいられなかった。
「いつになったら薬の調整をしてくれるのだろうか。」
横になってても、外に行っても、何も変わらない。
不安感と恐怖感で本当に危ない状況になりそうであった。
何もできない状況が虚しく、早く楽にしてほしいと願うばかりであった。
薬の調整がないまま、入院2日目の夜を迎えた。
美味しいとか美味しくないとかは全くわからない状況であったが、食事は何とかとれていた。
おそらく、味覚異常も扁桃体の部位が関わっていりょうであり、この扁桃体が反応しており、味覚異常も生じると考える。
また、僕は飲み込みも悪くなった。
食事をするが、うまく飲み込むことができなく、窒息しそうになることがあった。
すべて、脳の機能が低下したためだろうと思う。
うつ病は、本当に多種多様な症状を呈するとともに、個々人によっても生じる症状も同じではないので、うつ病の症状を理解することは非常に難しいと考える。
この味覚異常や飲み込みが悪いことも不安であり、不安がさらに不安となった。
消えない不安感、、、。
「いつになったら軽くなるのか。」
そればかり考えて、就寝時間を迎えた。
睡眠薬を服用したが、1時間や2時間で起きてしまい、いつものように眠れない時間を過ごすことになった。
「入院しても眠れない。何をして眠れない。」
増えていくのは不安感だけ、、、。
不安が強くなるのに比例して、緊張感も増強していく。「
過緊張状態である。
首こりや肩こり、腰痛、背中の痛みが激しくなってきた。
今まで自覚したことがない首や肩の凝り、腰痛、背中の痛み、、、。
「立ってても横になって痛い、、、。」
過緊張状態であり、血流が悪くなりコリや痛みを引き越すのだろうと思う。
そして、末端の血流が悪くなっているから、異様に手足が冷える。
いままで暑がりすぎていた人間であったのに、急に冷え症に悩まされた。
とにかく、手足が冷える、背中が寒い。
6月なのに、厚着をして過ごしていた。
夜は靴下をつけて眠っていた。
これも不安・緊張状態であるために、血流が悪くなっている証拠だと思う。
このように、不安感や恐怖感を中心に、様々な症状を抱えしまうのがうつ病であると思う。
そして、不安感を抱えたまま、入院3日目の朝を迎えることになる。